学研全訳古語辞典 |
して
そうして。それで。▽相手の話に対して、さらに説明を求めるときに発する語。多く、下に問いかけを伴う。
出典夜討曾我 謡曲
「して、まず何としたぞ」
[訳] それで、まずどうしたのだ。◆サ変動詞「す」の連用形に接続助詞「て」が付いて一語化したもの。
し-て
分類連語
(ある動作を)して。
出典伊勢物語 一
「昔、男、初冠(うひかうぶり)して」
[訳] 昔、ある男が元服して。
なりたち
サ変動詞「す」の連用形+接続助詞「て」
して
《接続》助詞「より」「から」や一部の副詞に付く。〔上の語を強める〕
出典更級日記 物語
「この源氏の物語、一の巻よりしてみな見せたまへ」
[訳] この源氏の物語を一の巻から全部お見せください。
して
《接続》形容詞型・形容動詞型活用の語の連用形、打消の助動詞「ず」の連用形に付く。
①
〔対等・並列〕…て。
出典方丈記
「ゆく川の流れはたえずして、しかも、もとに水にあらず」
[訳] 流れていく川の流れは絶えることがなくて、なおその上に、以前からあった水ではない。
②
〔状態〕…の状態で。…で。▽連用修飾語に付く。
出典大和物語 一六五
「中将、病いと重くしてわづらひける」
[訳] 中将は病気がたいそう重い状態で、苦しんでいた。
③
〔原因・理由〕…ために。…だから。
出典土佐日記 二・七
「都近くなりぬるよろこびにたへずして、いへるなるべし」
[訳] 都が近くなった喜びにこらえきれないために、歌を詠んだのであろう。
④
〔逆接〕…が。…のに。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「格子どもも、人はなくして開きぬ」
[訳] 格子なども、人はいないのに開いてしまった。
参考
サ変動詞「す」の連用形に接続助詞「て」が付いて一語化したもの。
して
《接続》体言や活用語の連体形などに付く。
①
〔共に動作を行う人数・範囲〕…で。…と(ともに)。
出典伊勢物語 九
「もとより友とする人、一人二人して行きけり」
[訳] 以前から友人としている人、一人二人とともに(東国へ)行った。
②
〔手段・道具・材料〕…で。…でもって。
出典伊勢物語 二四
「そこなりける岩に、指(および)の血して書きつけける」
[訳] そこにあった岩に、指の血で(歌を)書き付けた。
③
〔使役の対象〕…に。…を使って。…に命じて。
出典源氏物語 夕顔
「人して、惟光(これみつ)召させて」
[訳] (源氏は)人に命じて惟光をお呼ばせになって。
参考
サ変動詞「す」の連用形に接続助詞「て」が付いて一語化したもの。
し-て 【仕手・為手】
①
能楽・狂言の、主人公の役。また、その役者。シテ。前後二場に分かれる曲では、前場(=中入り前)のシテを前ジテ、後場(=中入り後)のシテを後(のち)ジテという。
②
する人。行う人。やりて。
参考
能楽・狂言では、もとは役者をすべて「する人」の意味で「して」と呼んだが、のちに役柄の分業が固定化するようになると、主役だけをさすようになった。「シテ」と片仮名で書くことが多い。
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