学研全訳古語辞典 |
せめ-て
①
しいて。無理に。
出典更級日記 後の頼み
「透きて見え給(たま)ふを、せめて絶え間に見奉れば」
[訳] (阿弥陀仏(あみだぶつ)が霧の中に)透けてお見えになるのを、しいて(霧の)晴れ間に拝見すると。
②
痛切に。切実に。
出典古今集 恋二
「いとせめて恋しきときはむばたまの(=枕詞(まくらことば))夜の衣を返してぞ着る」
[訳] とても切実に恋しいときは(夢であの人に会えるように)寝巻きを裏返しに着(て寝)ることだ。
③
甚だしく。きわめて。ひどく。
出典宇治拾遺 七・三
「せめて苦しきまで肥え給(たま)ひければ」
[訳] 甚だしく苦しいまでにお太りになったので。
④
よくよく。なおも。しきりに。
出典枕草子 木の花は
「なほさりともやうあらむと、せめて見れば」
[訳] (梨(なし)の花は日本では評判が悪いが)やはりそうは言っても(中国では珍重されるのは)わけがあるだろうと、よくよく見ると。
⑤
少なくとも。せめて…だけでも。
出典大和物語 七七
「せめて今宵(こよひ)はな参り給(たま)ひそ」
[訳] 少なくとも今夜だけはお伺いなさるな。
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