学研全訳古語辞典 |
に-て
《接続》体言、まれに活用語の連体形に付く。
①
〔場所〕…において。…で。
出典土佐日記 一二・二二
「潮海(しほうみ)のほとりにてあざれあへり」
[訳] 海の近くでふざけあっている。
②
〔時間・年齢〕…で。
出典徒然草 七
「長くとも、四十(よそぢ)に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ」
[訳] 長生きしても、四十歳に満たない年齢で死ぬのが、見苦しくないだろう。
③
〔資格・状態〕…として。…で。
出典源氏物語 桐壺
「ただ人(うど)にて朝廷(おほやけ)の御後見(うしろみ)をするなむ、行く先も頼もしげなること」
[訳] (源氏が)臣下として朝廷をお助けするのが、将来も心強い感じに思われることだよ。
④
〔手段・方法〕…によって。…で。
出典更級日記 かどで
「深き川を舟にて渡る」
[訳] 深い川を舟で渡る。
⑤
〔原因・理由〕…ことで。…によって。…のために。
出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
「我、朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて知りぬ」
[訳] 私が、毎朝毎晩見る竹の中にいらっしゃることでわかった。
⑥
〔材料〕…で。…によって。
出典徒然草 九
「女の履ける足駄(あしだ)にて作れる笛」
[訳] 女が履いている下駄で作った笛。
に-て
分類連語
…で。…であって。
出典奥の細道 旅立
「月は有明の月にて光をさまれるものから」
[訳] 月は有り明けの月であって、光はもう薄くなっているけれど。
参考
鎌倉時代以降「で」と変化し、現代語の断定の助動詞「だ」の連用形「で」のもとになった。
なりたち
断定の助動詞「なり」の連用形「に」+接続助詞「て」
に-て
分類連語
…てしまって(いて)。
出典万葉集 八二九
「梅の花咲きて散りなば桜花継ぎて咲くべくなりにてあらずや」
[訳] 梅の花が咲いて散ってしまったら、桜の花が続いて咲きそうになってしまっているではないか。
なりたち
完了の助動詞「ぬ」の連用形+接続助詞「て」
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