学研全訳古語辞典 |
に-も
分類連語
①
…においても。
出典源氏物語 桐壺
「前(さき)の世にも御契りや深かりけむ」
[訳] 前の世においても、ご宿縁が深かったのだろうか。
②
…におかれても。▽尊敬の意を表す。
出典枕草子 うへにさぶらふ御猫は
「御前にもいみじうおち笑はせ給(たま)ふ」
[訳] 中宮様におかれても(事情がわかって)大変お笑いになられる。
③
…につけても。
出典源氏物語 若紫
「まもらるるなりけりと思ふにも、涙ぞ落つる」
[訳] 自然と見つめないではいられなかったのだと思うにつけても、涙が落ちる。
④
…に比べても。…よりも。
出典土佐日記 一・九
「この人々の深き志は、この海にも劣らざるべし」
[訳] この(見送りにきた)人たちの深い友情は、この海の深さに比べてもひけをとらないにちがいない。
⑤
…の場合も。…の時も。
出典源氏物語 桐壺
「あくる年の春、坊(ばう)定まり給(たま)ふにも」
[訳] 翌年の春、皇太子がお決まりになる時も。
⑥
…にさえも。
出典源氏物語 桐壺
「色にも出(い)ださせ給(たま)はずなりぬるを」
[訳] 顔色にさえもお出しにならなくなってしまわれたので。
なりたち
格助詞「に」+係助詞「も」
に-も
分類連語
…でも。▽多く「あらず」「侍(はべ)らず」などの打消の語句や、「あれど」などの逆接を表す語句が続く。
出典枕草子 春はあけぼの
「雪の降りたるは、言ふべきにもあらず」
[訳] 雪が降っている(朝がよい)のは、言うまでもない。
なりたち
断定の助動詞「なり」の連用形「に」+係助詞「も」
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