学研全訳古語辞典 |
はし 【嘴】
くちばし。
出典伊勢物語 九
「白き鳥のはしと脚と赤き、鴫(しぎ)の大きさなる」
[訳] 白い鳥であって、くちばしと脚とが赤い、鴫くらいの大きさの(鳥)が。
は・し 【愛し】
活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
愛らしい。いとおしい。慕わしい。
出典万葉集 四三三一
「長き日(け)を待ちかも恋ひむはしき妻らは」
[訳] 長き日々を待ち恋うことだろうかいとおしい妻たちは。◆上代語。
はし 【橋】
①
川などの上に架け渡して、交通路とする建造物。
②
遣水(やりみず)や通路の上に架けられた廊(ろう)や渡殿(わたどの)。
③
「橋懸(はしが)かり」の略。
はし 【端】
①
(物の)はし。先端。末端。へり。ふち。
出典枕草子 木の花は
「せめて見れば、花びらのはしに、をかしきにほひこそ、心もとなうつきためれ」
[訳] よくよく見ると、(梨(なし)の花の)花びらの先端に美しい色つやが、ほのかについているように見える。
②
(家の)外に近いところ。縁側。
出典大和物語 一四九
「男や来ると見れば、はしにいでゐて」
[訳] 男が来るだろうかと思って見ていると、(その女は)縁側に出て座って。
③
(物の)一部分。一端。切れ端。
出典枕草子 正月に寺にこもりたるは
「なにともなき経のはし、うち誦(よ)み」
[訳] これときまったこともないお経の一部分を口ずさんだり。
④
(物事の)発端。端緒。はじまり。
出典千載集 恋四
「逢(あ)ひ見むと言ひ渡りしは行く末の物思ふ事のはしにぞありける」
[訳] (あなたに)会いたいと言いつづけていたことは、それから先のもの思いのはじまりであったのだ。
⑤
折。時。間。
出典万葉集 一九九
「露霜の(=枕詞(まくらことば))消(け)なば消ぬべく行く鳥の(=枕詞)争ふはしに」
[訳] 死ぬならば死んでしまえと先を争って戦う(その)時に。
⑥
中途はんぱ。はんぱ者。
出典古今集 雑下
「木にもあらず草にもあらぬ竹の節(よ)のはしにわが身はなりぬべらなり」
[訳] 木でもなければ草でもない竹の節と節の間の中空のように、世のはんぱ者に我が身はなってしまいそうだ。
はし 【階・梯】
①
(庭から建物に上る)階段。きざはし。
出典枕草子 故殿の御服のころ
「はしより高き屋(や)にのぼりたるを」
[訳] (若い人々が)階段から高い鐘楼にのぼったのを。
②
はしご。
出典太平記 二三
「警護の者どもはしをさして軒の上にのぼって見れば」
[訳] 警護の者たちがはしごを掛けて軒の上にのぼって見ると。
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