学研全訳古語辞典 |
やむごと-な・し
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
①
よんどころない。打ち捨てておけない。
出典蜻蛉日記 上
「『うちにしも、やむごとなき事あり』とて」
[訳] 「宮中によんどころない用事がある」と言って。
②
格別に大切だ。特別だ。この上ない。並たいていでない。
出典今昔物語集 二八・二
「摂津守(せつつのかみ)も、これらをやむごとなき者にして、後前に立ててぞつかひける」
[訳] 摂津守もこれらの兵を格別に大切な者と考えて、自分の前後に立たせて使った。
③
高貴だ。尊ぶべきだ。重々しい。
出典源氏物語 桐壺
「いとやむごとなききはにはあらぬが、すぐれて時めき給(たま)ふありけり」
[訳] それほど高貴な身分ではない方で、際だって帝(みかど)のご寵愛(ちようあい)を受けて栄えていらっしゃる方があった。◆「やんごとなし」「やうごとなし」「やごとなし」とも。
参考
「やむごとなし」と「あてなり」の違い 「やむごとなし」は身分を表す場合、類がないような最上のものをいう。一般的な高貴さを表す「あて(貴)なり」とはその点で異なる。
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