学研全訳古語辞典 |
らし
《接続》活用語の終止形に付く。ただし、ラ変型活用の語には連体形に付く。
①
〔推定〕…らしい。きっと…しているだろう。…にちがいない。▽現在の事態について、根拠に基づいて推定する。
出典万葉集 二八
「春過ぎて夏来たるらし白栲(しろたへ)の衣(ころも)干(ほ)したり天(あま)の香具山(かぐやま)」
[訳] ⇒はるすぎてなつきたるらし…。
②
〔原因・理由の推定〕(…であるのは)…であるかららしい。(…しているのは)きっと…というわけだろう。(…ということで)…らしい。▽明らかな事態を表す語に付いて、その原因・理由となる事柄を推定する。
出典万葉集 二二二五
「わが背子(せこ)が挿頭(かざし)の萩(はぎ)に置く露をさやかに見よと月は照るらし」
[訳] あなたが髪に挿した萩に置く露をはっきり見なさいということで、月は照っているらしい。
語法
(1)連体形と已然形の「らし」(2)上代の連体形「らしき」 上代の連体形には「らしき」があったが、係助詞「か」「こそ」の結びのみで、しかも用例は少ない。係助詞「こそ」の結びの場合、上代では、形容詞型活用の語の結びはすべて連体形であるので、これも連体形とされる。(3)「らむ」との違い⇒らむ(4)主として上代に用いられ、中古には和歌に見られるだけである。(5)ラ変型活用の語の連体形に付く場合、活用語尾の「る」が省略されて、「あらし」「けらし」「ならし」などの形になる傾向が強い。
注意
「らし」が用いられるときには、常に、推定の根拠が示されるので、その根拠を的確にとらえることである。
らし
推定の助動詞「らし」の連体形。
出典古今集 冬
「奥山の雪消(ゆきげ)の水ぞ今まさるらし」
[訳] 奥山の雪解けの水が今多くなっているらしい。
らし
推定の助動詞「らし」の已然形。
出典古今集 雑上
「ぬき乱る人こそあるらし」
[訳] 糸を抜いて玉を乱れ散らす人がいるらしい。
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