学研全訳古語辞典 |
よ-の-なか 【世の中】
①
人の一生。
出典万葉集 一四一〇
「よのなかはまこと二代(ふたよ)は行かざらし」
[訳] 人の生涯はほんとうに二度とはないようだ。
②
現世。この世。
出典万葉集 七九三
「よのなかは空(むな)しきものと知る時し」
[訳] ⇒よのなかはむなしきものと…。
③
(天皇の)治世。政治。
出典源氏物語 澪標
「よのなか改まりて、ひきかへ今めかしき事ども多かり」
[訳] 治世が変わって、ひきかえ当世風なことが多い。
④
世間。社会。世の中。
出典古今集 春上・伊勢物語八二
「よのなかにたえて桜のなかりせば」
[訳] ⇒よのなかにたえてさくらの…。
⑤
世情。世間の情勢。世間の出来事。
出典枕草子 胸つぶるるもの
「よのなかなどさわがしと聞こゆるころは」
[訳] (悪疫流行の)世情などが騒がしく評判されるころは。
⑥
世評。世間の人気。
出典大鏡 兼通
「父殿うせたまひにしかば、よのなかおとろへなどして」
[訳] 父の殿がお亡くなりになったので、世の評判もだんだん下降気味になったりして。
⑦
身の上。境遇。
出典源氏物語 梅枝
「親なくてよのなかかたほにありとも」
[訳] 親がなくて身の上が不十分であるとしても。
⑧
男女の仲。夫婦の仲。
出典伊勢物語 一〇二
「歌はよまざりけれど、よのなかを思ひしりたりけり」
[訳] 歌は詠まなかったが、男女の仲のことについてはよくわきまえていた。
⑨
周囲の状況。
⑩
世間一般。世の常。
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