学研全訳古語辞典 |
しゃつ 【奴】
あいつ。そいつ。▽他称の人称代名詞。他人をののしって言う語。
つぶね 【奴】
①
召使い。しもべ。
②
仕えること。奉公。奉仕。
出典雨月物語 吉備津の釜
「朝夕のつぶねもことに実(まめ)やかに」
[訳] 朝夕の奉仕も特別に心がこもっていて。
-め 【奴】
①
人を卑しめののしる意を表す。「法師め」。
②
自分や自分の身内などを卑下する意を表す。「私め」
やつ 【奴】
①
人や動物を軽べつしていう語。
出典竹取物語 竜の頸の玉
「かぐや姫てふ大盗人のやつが」
[訳] かぐや姫という大悪党のやつが。
②
「こと」「わけ」「もの」などの意。◇くだけた物言いの中で形式名詞として用いる。
出典浮世風呂 滑稽
「どうも銭金(ぜにかね)といふやつはたまりませぬ」
[訳] どうも銭金というものはたまりません。◇近世語。
あいつ。こやつ。▽他称の人称代名詞。第三者を軽べつ、または、軽い親しみをこめていう語。
出典平家物語 四・競
「親しいやつめに盗まれて候ふ」
[訳] 親しいあいつに盗まれました。
参考
[一]は「やつこ」の変化した語。
や-つ-こ 【奴・臣】
①
臣下。家来。召使い。
出典方丈記
「伴ふべき人もなく、頼むべきやつこもなし」
[訳] 連れそう妻子もなく、頼りにする召使いもない。
②
やつ。▽相手をののしっていう語。
出典万葉集 一七八三
「中上(なかのぼ)り来(こ)ぬ麻呂(まろ)といふやつこ」
[訳] 中上り(=国司の、在任中の上京)もして途中で上京して来ない麻呂というやつ。
わたくしめ。▽自称の人称代名詞。謙そんしていう語。男女ともに用いる。
出典万葉集 四〇八二
「天(あま)ざかる(=枕詞(まくらことば))鄙(ひな)のやつこに」
[訳] 遠く離れた田舎のわたくしめに。
参考
「家(や)つ子(こ)」の意。「つ」は「の」の意の上代の格助詞。
やっこ 【奴】
①
武家の下僕。中間(ちゆうげん)。主人の行列には、槍(やり)や挟み箱などを持って先頭に立つ。髪を撥鬢(ばちびん)(=両の鬢を三味線の撥先の形にそり込んだ髪型)に結い、鎌髭(かまひげ)をはやし、寒中でも袷(あわせ)一枚という独特の風俗をした。
②
(江戸時代初期の)侠客(きようかく)。男伊達(おとこだて)。旗本奴と町奴とがあって、ともに徒党を組み派手な風俗をして、侠気を売り物にした。◆「やつこ」の促音便。近世語。
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