学研全訳古語辞典 |
さる-を 【然るを】
①
そうであるのに。
出典伊勢物語 二一
「男女、いとかしこく思ひ交はして、異心(ことごころ)なかりけり。さるを、…世の中を憂しと思ひて」
[訳] 男と女がたいそう深く慕い合って、(どちらも)浮気心がなかった。そうであるのに、…(女は)男との仲をいやに思って。
②
さて。ところで。
出典幻住庵記 俳文・芭蕉
「さるを、筑紫(つくし)高良山(かうらさん)の僧正は」
[訳] ところで、筑紫の高良山の僧正は。◆ラ変動詞「さり」の連体形に接続助詞「を」が付いて一語化したもの。
しかる-を 【然るを】
①
そうであるのに。ところが。
出典方丈記
「心を修めて道を行はんとなり。しかるを、汝(なんぢ)、姿は聖人(ひじり)にて、心は濁りに染(し)めり」
[訳] 心を正しくして仏の道を行おうとするためである。ところが、あなたは、姿は聖人だが心は濁りに染まっている。
②
そのように。そういう状態で。
出典平家物語 七・木曾山門牒状
「勝つ事を咫尺(しせき)のもとに得たり。しかるをうてば必ず伏し、せむれば必ずくだる」
[訳] 勝利をすぐ眼の前で即座に得た。そういう状態で(敵は)討てば必ず服従し、攻めれば必ず降参する。◆ラ変動詞「しかり」の連体形に接続助詞「を」が付いて一語化したもの。
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