学研全訳古語辞典 |
まうさ-せ-たま・ふ 【申させ給ふ】
分類連語
(一)
〔「まうす」が動詞の場合〕
①
〔「せ」が使役の意の場合〕(人を通して)申し上げさせなさる。
出典源氏物語 明石
「御使ひしてまうさせたまふ」
[訳] お使いによって申し上げさせなさる。
②
〔「せ」が尊敬の意の場合〕お申し上げあそばす。
出典枕草子 淑景舎、東宮に
「『はやのぼらせたまへ』とまうさせたまふに」
[訳] (中宮が)「早く参内(さんだい)なさってください」とお申し上げあそばす時に。
③
〔「せ」が謙譲の意の場合〕お申し上げになる。
出典枕草子 大納言殿まゐり給ひて
「『今は明けぬるに、かう大殿(おほとの)ごもるべきかは』とまうさせたまへば」
[訳] 「もう夜が明けたのに、このように(主上が)お休みになられてよいのでしょうか」と(大納言が中宮に)お申し上げになると。
(二)
〔「まうす」が補助動詞の場合〕
①
〔「せ」が尊敬の意の場合〕お…申し上げあそばす。
出典大鏡 道長上
「いかでかは院をおろかに思ひまうさせたまはまし」
[訳] どうして(道長公は)三条院をおろそかにお思い申し上げあそばされようか。
②
〔「せ」が謙譲の意の場合〕お…申し上げになる。
出典大鏡 三条
「御乳母(めのと)たちは笑ひまうさせたまける」
[訳] 御乳母たちは(道長公の言動に対して)お笑い申し上げになった。◇「たまける」は「たまひける」のウ音便「たまうける」の「う」が表記されない形。
なりたち
動詞または補助動詞「まうす」の未然形+助動詞「す」の連用形+尊敬の補助動詞「たまふ」
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