学研全訳古語辞典 |
いろ 【色】
①
色。色彩。
出典宇治拾遺 一・三
「赤きいろには青き物を着」
[訳] 赤い色(の鬼)は青い着物を着て。
②
衣服の色。▽身分や階級によって定められていた。
出典源氏物語 若菜下
「御衣(おほんぞ)のいろも深くなり給(たま)へれ」
[訳] (昇進して)お召し物の色も濃く(=上位の色に)おなりになったが。
③
喪服。喪服の色。▽黒、または鈍色(にびいろ)(=濃いねずみ色)。
出典源氏物語 幻
「女房なども、かの御形見のいろ替へぬもあり」
[訳] 女房などの中には、亡き人の思い出の手がかりとなる喪服を(平服に)着替えないものもいる。
④
表面。顔色。表情。態度。
出典伊勢物語 七八
「いろ見えぬ心を見せむよしのなければ」
[訳] 表面に現れない私の気持ちを見せる方法がないので。
⑤
風情。趣。気配。
出典古今集 春下
「春のいろの至り至らぬ里はあらじ」
[訳] 春の気配が及んでいる里と及んでいない里の違いはあるまい。
⑥
はなやかさ。華美。
出典古今集 仮名序
「今の世の中、いろにつき、人の心、花になりにけるより」
[訳] 今の世の中は、華美に傾き、人の心が、浮わついてきてしまったので。
⑦
やさしさ。人情味。
出典徒然草 一四一
「げには、心のいろ無く、情け遅れ」
[訳] (東国の人は)本当のところは、心のやさしさがなく、情味に乏しく。
⑧
恋愛。色欲。
出典徒然草 一七二
「いろにふけり、情けに愛(め)で」
[訳] 恋愛に夢中になり、愛情に心動かされたりして。
⑨
恋人。愛人。
出典太平記 一八
「御心に染むいろもなかりけるにや」
[訳] お心にかなう恋人もなかったのであろうか。
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