学研全訳古語辞典 |
かずく 【被く・潜く】
⇒かづく
かづ・く 【被く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
かぶる。
出典徒然草 五三
「傍らなる足鼎(あしがなへ)を取りて、頭にかづきたれば」
[訳] そばにある足のついた鼎を取って頭にかぶったところ。
②
いただいた衣服を左肩にかける。(褒美などを)いただく。
出典大和物語 一二五
「大将も物かづき忠岑(ただみね)も禄(ろく)賜りなどしけり」
[訳] 大将も引き出物をいただき、忠岑もご褒美をいただいたりなどした。
③
負担する。身に引き受ける。
出典心中万年草 浄瑠・近松
「男のある娘をかづかせて、去らせて構はぬ工面ぢゃな」
[訳] 男のいる娘を背負い込ませて、離縁させて知らんぷりするつもりだな。
{語幹〈かづ〉}
①
頭からかぶせる。
出典伊勢集
「まとゐする身に散りかかる紅葉(もみじ)葉は風のかづくる錦(にしき)なりけり」
[訳] 皆で丸くなって座っている身に散りかかる紅葉の葉は、風がかぶせる錦の織物であったことよ。
②
(褒美・引き出物として衣服を)左肩にかけてやる。与える。
出典竹取物語 燕の子安貝
「『願ひを叶(かな)ふることのうれしさ』とのたまひて、御衣(みぞ)脱ぎてかづけ給(たま)ひつ」
[訳] 「願いをかなえてくれることのうれしさよ」とおっしゃって、お召し物を脱いで褒美としてお与えなさった。
③
押しつける。負わせる。
出典日本永代蔵 浮世・西鶴
「自分商ひを仕掛け、利徳はだまりて、損は親方にかづけ」
[訳] 自分で取引を始め、利益はだまって(自分のものにし)、損失は主人に押しつけ。
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