学研全訳古語辞典 |
かよ・ふ 【通ふ】
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
①
通う。
出典伊勢物語 八三
「昔、水無瀬(みなせ)にかよひ給(たま)ひし惟喬(これたか)の親王(みこ)、例の狩りしにおはします供に」
[訳] 昔、水無瀬に通いなさった惟喬親王が、いつものように鷹(たか)狩りをしにおいでになるお供として。
②
通る。行き来する。
出典新古今集 春下
「風かよふ寝覚めの袖(そで)の花の香(か)に薫る枕(まくら)の春の夜の夢」
[訳] ⇒かぜかよふ…。
③
(男が女の家へ)通う。結婚する。
出典伊勢物語 一一〇
「むかし、男、みそかにかよふ女ありけり」
[訳] 昔、男がこっそり通う女がいたということだ。
④
通じる。
出典万葉集 三九六九
「思ほしき言(こと)もかよはず」
[訳] 思っている言葉も通じない。
⑤
よく知っている。通じている。
出典源氏物語 御法
「仏の道にさへかよひ給(たま)ひける御心の程などを」
[訳] 仏道にまで通じておられるお心のほどなどを。
⑥
似通う。通じる。
出典奥の細道 象潟
「江の縦横一里ばかり、おもかげ松島にかよひてまた異なり」
[訳] 入り江の東西と南北はそれぞれ一里(=約四キロメートル)ほどで、ようすは松島に似通っているが、また違っている。
⑦
交差する。入り交じる。
出典拾遺集 雑賀
「松が枝(え)のかよへる枝をとぐらにて」
[訳] 松の枝で交差している枝を鳥のねぐらとして。
⑧
つながっている。通じる。
出典奥の細道 象潟
「東に堤を築きて秋田にかよふ道はるかに」
[訳] 東には堤を築いて、秋田に通じる道が遠く続いており。
参考
③は王朝時代の貴族の結婚形態を反映している。女性の家に男性が通うという形であった。⇒古典の常識
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