学研全訳古語辞典 |
きこえ-さ・す 【聞こえさす】
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
申し上げるのを途中でやめる。▽「言ひさす」の謙譲語。
出典源氏物語 玉鬘
「人々参れば、きこえさしつ」
[訳] 人々が参上して来たので、申し上げるのを途中でやめた。◆「さす」は接尾語。
きこえ-さ・す 【聞こえさす】
活用{せ/せ/す/する/すれ/せよ}
①
申し上げる。▽「言ふ」の謙譲語。
出典紫式部日記 寛弘五・一一・一五
「戯れにても、さきこえさせ、たまはせしことなれば」
[訳] (その言葉が)冗談でも、そう(=早く帰参すると)申し上げ、(こうしてお手紙を)くださったことなので。
②
手紙を差し上げる。
出典源氏物語 空蟬
「人の思ひ侍(はべ)らむことの恥ずかしきになむ、えきこえさすまじき」
[訳] 人が思うでしょうことが恥ずかしくて、お手紙を差し上げることはできそうもない。
活用{せ/せ/す/する/すれ/せよ}
〔動詞の連用形に付いて〕お…し申し上げる。お…いたす。▽謙譲の意を表す。
出典紫式部日記 消息文
「しどけなくかう教へたてきこえさせて侍(はべ)る」
[訳] (中宮様に)整理もしないままこのようにお教え申し上げております。
きこえ-・さす 【聞こえさす】
分類連語
(人を介して)申し上げさせる。▽「さす」は使役の意味。
出典源氏物語 若紫
「かの祖母(おば)に語らひ侍(はべ)りて、きこえさせむ」
[訳] あの祖母に相談しまして、(祖母から)申し上げさせましょう。
なりたち
動詞「きこゆ」の未然形+使役の助動詞「さす」
注意
動詞「きこゆ」の未然形+尊敬の助動詞「さす」は尊敬の補助動詞「給(たま)ふ」が付いている場合に限られる。
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