学研全訳古語辞典 |
ただ
(一)
【直】
①
直接。じかに。
出典徒然草 二二
「ただ言ふ言葉も、口をしうこそなりもてゆくなれ」
[訳] 直接話す言葉(=会話)も、だんだん情けなくなってゆくようだ。
②
すぐ。ちょうど。▽距離的・時間的に間をおかないようす。
出典源氏物語 若紫
「ただこのつづら折りの下(しも)に」
[訳] ちょうどこの曲がりくねった坂道の下の方に。
(二)
【唯・只】
①
わずかに。たった。単に。▽それだけに限定する意。
出典新古今集 雑中
「人住まぬ不破(ふは)の関屋の板廂(いたびさし)荒れにしのちはただ秋の風」
[訳] ⇒ひとすまぬ…。
②
ただもう。むやみに。まったく。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「立て籠(こ)めたるところの戸、すなはち、ただ開(あ)きに開きぬ」
[訳] 閉め切っておいた所の戸が、すぐに、ただもうどんどん開いてしまった。
③
ちょうど。まるで。▽下に「ごとし」「やうなり」を伴うことが多い。
出典平家物語 一・祇園精舎
「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」
[訳] 思い上がりわがままに振る舞っている人も長くは続かず、ちょうど春の夜に見る夢のよう(にはかないもの)だ。
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