学研全訳古語辞典 |
たちばなの…
分類和歌
「橘のにほふあたりのうたた寝は夢も昔の袖(そで)の香ぞする」
出典新古今集 夏・藤原俊成女(ふぢはらのとしなりのむすめ)
[訳] 懐かしい人を思い出させるたちばなの花の香り、その花のにおう辺りでうたた寝をすると、夢の中にも昔の恋人の袖の香がすることだ。
鑑賞
「五月(さつき)待つ花橘(はなたちばな)の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」(『古今和歌集』)〈⇒さつきまつ…。〉を本歌とする歌。本歌ではたちばなの花に昔の恋人を思うだけだったが、さらにうたた寝に見る夢にも昔の恋人の袖の香がすると言って、失われた時代を二重に懐旧している。深い喪失感をたたえた、恋のつややかな情趣が味わい深い。「ぞする」は係り結びの強めの用法。
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