学研全訳古語辞典 |
たる
①
完了の助動詞「たり」の連体形。
②
断定の助動詞「たり」の連体形。
た・る 【垂る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
垂れ下がる。
出典源氏物語 末摘花
「先の方(かた)すこしたりて色づきたること」
[訳] (鼻は)先端のほうが少し垂れ下がって、赤みを帯びていること。
②
したたる。
出典徒然草 五三
「頸(くび)のまはり欠けて、血たり」
[訳] 首のまわりに傷がついて、血がしたたり。
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
垂れ下げる。ぶら下げる。垂らす。
出典平家物語 三・大塔建立
「いづくより来たるともなき老僧の、眉(まゆ)には霜をたれ」
[訳] どこから来たともわからない老僧で、眉には霜をぶら下げ。
②
したたらす。
出典宇治拾遺 七・一
「涙をたれて泣く」
[訳] 涙をしたたらせて泣く。
③
現し示す。
出典源氏物語 明石
「近き境を鎮め守り給(たま)ふ、まことに跡をたれ給ふ神ならば」
[訳] 近くの地域を鎮めて守っていらっしゃる、本当に仏が人々を救うために姿を現し示しなさる神であるならば。
た・る 【足る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
十分である。満ち備わっている。
出典方丈記
「その地、程狭(せば)くて、条里を割るにたらず」
[訳] その土地は、面積が狭くて、東西南北の町割りを作るのに十分でない。
②
相応している。価値がある。値する。
出典徒然草 三八
「万事は皆非(ひ)なり。言ふにたらず、願ふにたらず」
[訳] 万事は皆、無である。言うだけの価値がなく、願うにも値しない。
③
満足する。
出典徒然草 五八
「求むるところはやすく、その心はやくたりぬべし」
[訳] 求めるものはたやすく手に入り、その心はすぐに満足してしまうにちがいない。
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