学研全訳古語辞典 |
布留
分類地名
歌枕(うたまくら)。今の奈良県天理市布留町付近。石上(いそのかみ)神宮がある。天理市旧市街とその東方一帯を石上といい、布留はその一部であったので、和歌では「石上布留」と続けて用いられもする。同音の「古」や「降る」をかける歌も多い。
ふ・る 【振る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
揺り動かす。
出典万葉集 二〇
「野守(のもり)は見ずや君が袖(そで)ふる」
[訳] ⇒あかねさす…。
②
(神霊を)移す。(神輿(みこし)を)担ぎ動かす。
出典大鏡 道長上
「大和の国三笠(みかさ)山にふり奉りて」
[訳] 大和国の三笠山に神霊を移し申し上げて。
③
すげなくする。
出典好色一代男 浮世・西鶴
「はじめの高雄に三十五までふられ」
[訳] 初代の高雄大夫に三十五度までもすげなくされて。
④
入れ換える。振り替える。
出典去来抄 先師評
「『行く春』は『行く歳(とし)』にも、ふるべし」
[訳] (この句の)「行く春」は「行く歳」にも入れ換えることができるだろう。
ふ・る 【旧る・古る】
活用{り/り/る/るる/るれ/りよ}
①
年月がたつ。年月が過ぎる。年月を過ごす。
出典古今集 春下
「花の色は移りにけりないたづらにわが身(み)世(よ)にふるながめせし間(ま)に」
[訳] ⇒はなのいろは…。
②
年をとる。老いる。
出典源氏物語 少女
「今はかくふりぬる齢(よはひ)に」
[訳] 今はこのように老いてしまった年齢で。
③
古びる。ありふれる。
出典源氏物語 朝顔
「世にふりたることなれど、なほ、めづらしくも、はかなきことを、しなし給(たま)へりしかな」
[訳] 世間でありふれたことだが、やはり目新しいものに、ちょっとしたことを、(工夫されて)なさったのだなあ。
ふ・る 【触る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
(軽く)さわる。ふれる。
出典万葉集 四三二八
「磯(いそ)にふり海原(うのはら)渡る」
[訳] 磯にふれて(=岩伝いに船で)海原を渡る。◆上代語。
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
(軽く)さわる。ふれる。(食事に)箸(はし)をつける。
出典源氏物語 桐壺
「けしきばかりふれさせ給(たま)ひて」
[訳] (お食事に)形だけ箸をおつけになられて。
②
(ほんの少し)かかわり合う。関係する。
出典源氏物語 桐壺
「この御事にふれたることをば、道理をも失はせ給ひ」
[訳] この桐壺(きりつぼ)の更衣に関係したことには、(帝(みかど)は)道理をも無視なさって。
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
(広く)告げ知らせる。
出典平家物語 一・内裏炎上
「子細を衆徒(しゆと)にふれんとて、登山(とうざん)しけるを」
[訳] 詳細を衆徒に告げ知らせようと、比叡山(ひえいざん)に登って来たのを。
ふ・る 【降る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
雨や雪が降る。
出典古今集 冬
「朝ぼらけ有り明けの月と見るまでに吉野の里にふれる白雪(しらゆき)」
[訳] ⇒あさぼらけありあけのつきと…。
②
涙が流れる。▽比喩(ひゆ)的な用法。
出典源氏物語 桐壺
「鈴虫の声の限りを尽くしても長き夜あかずふる涙かな」
[訳] ⇒すずむしの…。
ふ・る 【震る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
(大地が)揺れ動く。震動する。
出典方丈記
「かく、おびたたしくふる事は、しばしにて止(や)みにしかども」
[訳] このように、ものすごく(大地が)揺れ動くことは、少しの間で止んでしまったけれども。
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