学研全訳古語辞典 |
う・せる 【失せる】
活用{せ/せ/せる/せる/せれ/せろ}
①
行きやがる。▽「行く」「去る」を卑しめていう語。
出典心中天網島 浄瑠・近松
「阿呆(あはう)めが、夜々(よるよる)うせる所ほかには知らぬか」
[訳] (あの)馬鹿者めが、毎晩行きやがる所を、ほかには知らないか。
②
来やがる。▽「来る」を卑しめていう語。
出典浮世風呂 滑稽
「対手(あひて)になる。うせぬか、おのれ」
[訳] 相手になってやる。来やがらないか、おまえ。
③
居やがる。▽「居る」を卑しめていう語。
出典四谷怪談 歌舞
「今夜向うから花嫁を連れて来る。お岩がうせては、大変大変」
[訳] 今夜向こうから花嫁を連れて来る。お岩が(この家に)居やがっては、大変だ大変だ。
語の歴史
「なくなる」「消える」意の「失(う)す」(サ行下二段活用動詞)が、中古末期ごろから口語化して下一段活用となり、それとともに卑しめていう語となって、近世に広く用いられた。
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