学研全訳古語辞典 |
なさけ 【情け】
①
情愛。思いやり。
出典徒然草 五九
「そのとき、老いたる親、いときなき子、君の恩、人のなさけ捨て難しとて捨てざらんや」
[訳] その(死がやってきた)ときに、年老いた親、幼い子、主君の恩、人の情愛を、捨てかねるからといって捨てないでいられようか、捨てないではいられない。
②
愛情。恋情。男女間の異性を思う心。
出典徒然草 一三七
「男女(をとこをんな)のなさけも、ひとへに逢ひ見るをば言ふものかは」
[訳] 男女間の恋情も、いちずに会っている(最中だけ)をいうものだろうか、いや、そうではない。
③
みやび心。風流心。情趣・風流を解する心。
出典源氏物語 行幸
「上(うへ)はその中(うち)になさけ棄すてずおはしませば」
[訳] 主上は心の中に風流心をお忘れにならずにいらっしゃる(方である)から。
④
情趣。風情。趣。
出典徒然草 一三七
「垂れこめて春の行方知らぬも、なほあはれになさけ深し」
[訳] すだれを垂らして(部屋の中に)とじこもって、春の過ぎて行くのを知らないでいるのも、やはりしみじみとして、情趣が深い。
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