学研全訳古語辞典 |
うき-よ 【憂き世・浮き世】
①
つらいこの世。苦しみの多いこの世。
出典紫式部日記 寛弘五・七・中
「うきよの慰めには、かかる御前をこそたづね参るべかりけれ」
[訳] つらいこの世の慰めには、この(彰子の)ような御方をお訪ねするのがよいのであった。
②
無常のこの世。俗世間。
出典新古今集 雑中
「山里にうきよいとはむ友もがな」
[訳] この山里に俗世間を避けて私とともに住むような友があってくれればなあ。
③
つらい男女の仲。
出典源氏物語 若菜下
「口惜しくうきよと思ひ果て給(たま)ふ」
[訳] 残念でつらい男女の仲と思い切りなさる。
④
現世。この世。
出典日本永代蔵 浮世・西鶴
「男盛りにうきよを、何のおもしろいこともなく果てられ」
[訳] 男盛りのときにこの世を何のおもしろいこともなくて死んでしまわれ。
⑤
楽しむべきこの世。享楽の世。
出典浮世物語 仮名
「水に流るる瓢簞(へうたん)のごとくなる、これをうきよと名づくるなり」
[訳] 水に流れる瓢簞(ひようたん)のようなのを、これを楽しむべきこの世(=浮き世)と名付けるのである。
⑥
遊里。遊里での遊び。好色。◆①②③は多く「憂き世」と書く。④⑤⑥は多く「浮き世」と書き、近世語。
参考
仏教的厭世(えんせい)観を背景に現世を「憂し(=つらい)」と見る「憂き世」が本来の意。そこに漢語の「浮生(ふせい)(=定めない人生)」「浮世(ふせい)(=定めない世)」の意が加わり「浮き世」とも書かれるようになった。近世になると厭世観の裏返しで享楽的に生きようとする気風が広まり⑤⑥の意で用いられるようになった。
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