学研全訳古語辞典 |
こ-の 【此の】
分類連語
①
この。▽話し手に近い事物や人をさす。
出典更級日記 大納言殿の姫君
「その後は、この猫を北面(きたおもて)にも出(い)ださず、思ひかしづく」
[訳] その後からは、この猫を北向きの部屋にもいれず、心をこめて世話する。
②
その。この。▽話題となっている事物や人をさす。
出典徒然草 四六
「強盗法印(がうだうのほふいん)と号する僧ありけり。たびたび強盗にあひたるゆゑに、この名をつけにけるとぞ」
[訳] 強盗の法印と称する僧がいた。何度も強盗にあったために、その名をつけたとかいうことだ。
③
それ以来の。最近の。
出典源氏物語 若紫
「失せて、この十余年にやなり侍(はべ)りぬらむ」
[訳] (娘が)死んで、それ以来の十余年になってしまっているでしょうか。
参考
現代語では「この」の形で連体詞。古語で「こ」と「の」の二語に分けるのは、現代語とちがって代名詞「こ」の下に他の助詞も付くからである。
なりたち
代名詞「こ」+格助詞「の」
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