学研全訳古語辞典 |
さ-ながら 【然ながら】
①
そのまま。そのままの状態で。もとのまま。
出典源氏物語 夕顔
「帰り入りて探りたまへば、女君はさながら臥(ふ)して」
[訳] (源氏が部屋に)もどって手さぐりなさると、女君(=夕顔)はもとのまま横たわっていて。
②
残らず全部。そっくりそのまま。すっかり。ことごとく。
出典方丈記
「七珍万宝(しつちんまんぽう)さながら灰燼(くわいじん)となりにき」
[訳] あらゆるすばらしい宝物が残らず全部(焼けて)灰になってしまった。
③
〔下に打消の語を伴って〕まったく。全然。
出典徒然草 七五
「人に交はれば、言葉よその聞きに従ひて、さながら心にあらず」
[訳] 人と交際すると、(自分の)言葉が他人の思惑に左右されて、まったく(自分の)心(からのもの)でなくなる。
④
〔下に「ごとし」「やうなり」など比況の表現を伴って〕まるで。ちょうど。
出典羽衣 謡曲
「今や、さながら天人も羽なき鳥のごとくにて」
[訳] (羽衣をとられて)今は、まるで天人も羽のない鳥のようで。◇中世以降の用法。
しか-ながら 【然ながら】
分類連語
そっくりそのまま。
出典大和物語 一五七
「物かきふるひ去いにし男なむ、しかながら運びかへして」
[訳] (家にある)物をすっかり(他の家に)運び出して去っていった男は、そっくりそのまま(それらの物を)運び戻して。
なりたち
副詞「しか」+接続助詞「ながら」
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