学研全訳古語辞典 |
さる-は 【然るは】
①
そうであるのは。それというのも実は。▽順接を表す。
出典源氏物語 若紫
「ねびゆかむさまゆかしき人かなと目とまり給(たま)ふ。さるは、限りなう心を尽くし聞こゆる人に、いとよう似奉れるが、まもらるるなりけり」
[訳] これから成長してゆくようすが見たい人だなあと、(源氏は若紫に)目がおとまりになる。それというのも実は、(源氏が)この上もなく心からお慕い申し上げている方(=藤壺(ふじつぼ))に、実によく似申し上げているので、自然と見つめないではいられなかった。
②
そのうえ。
出典徒然草 三〇
「聞き伝ふるばかりの末々は、あはれとやは思ふ。さるは、跡とふわざも絶えぬれば」
[訳] (故人のことを)聞き伝えているだけの子孫は、(その故人のことを)しみじみと思うだろうか、いや思いはしない。そのうえ、死後を弔うことも絶えてしまうと。
③
そうではあるが。そうはいうものの。▽逆接を表す。
出典土佐日記 二・一六
「望みて預かれるなり。さるは、たよりごとに物も絶えず得させたり」
[訳] (先方から)望んで(私の家を)預かったのである。そうではあるが、(預けた私の方から)機会のあるたびに、贈り物も絶えず与えてきた。
参考
ラ変動詞「さり」の連体形に係助詞「は」が付いて一語化したものとする説もある。
然るはのページへのリンク |