学研全訳古語辞典 |
む
《接続》活用語の未然形に付く。
①
〔推量〕…だろう。…う。
出典更級日記 物語
「まめまめしき物は、まさなかりなむ」
[訳] 実用的な物は、きっとよくないだろう。
②
〔意志〕…(し)よう。…(する)つもりだ。
出典伊勢物語 二三
「男はこの女をこそ得(え)めと思ふ」
[訳] 男は(他の女性ではなく)この女性を(妻として)手にいれようと思う。
③
〔仮定・婉曲(えんきよく)〕…としたら、その…。…のような。▽主として連体形の用法。
出典枕草子 思はむ子を
「思はむ子を法師になしたらむこそ心苦しけれ」
[訳] いとしく思うような子を法師にしたとしたら、それは気の毒である。
④
〔適当・勧誘〕…するのがよい。…したらどうだ。…であるはずだ。
出典徒然草 六
「子といふもの、なくてありなん」
[訳] 子供というものは、ないほうがよい。⇒てむ・なむ
語法
(1)未然形の「ま」 未然形の「ま」は上代に限られ、接尾語「く」が付いた「まく」の形で用いられた。⇒まく(2)已然形の「め」 [ア] 已然形「め」が「めかも」「めや」「めやも」などの形で用いられるのは主に上代に限られ、その「か」「や」は反語の意を表した。[イ] 係助詞「こそ」の結びの語となって「こそ…め」の形となるときは、適当・勧誘の意(④)を表すことが多い。しかし、②の『伊勢物語』のような例外もある。(3)「む」「らむ」「けむ」の比較
注意
主語が一人称の場合は②の意に、二人称の場合は④の意に、三人称の場合には①の意になることが多い。
参考
中世以降は、「ん」と表記する。
語の歴史
中古末期から中世前期にかけて発音が「ン」から「ウ」に変化し、助動詞「う」の形が生じた。
-む
形容詞の語幹などに付いて、…のような状態になる(させる)、…のように振る舞う、の意の動詞を作る。「あか(赤)む」「かなしむ」「にがむ」「ひろむ」
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