学研全訳古語辞典 |
きみ 【君・公】
①
天皇。帝(みかど)。
出典万葉集 四四六五
「天(あま)の日嗣(ひつ)ぎと継ぎて来るきみの御代(みよ)御代」
[訳] 皇祖以来のみ位として継承してきた天皇の御代御代に。
②
主君。主人。
出典徒然草 五九
「きみの恩、人の情け、捨てがたしとて捨てざらんや」
[訳] 主君の恩、人の情愛を、捨てかねるからといって、捨てないでいられようか、いや、捨てないではいられない。
③
お方。▽貴人を敬っていう語。
出典源氏物語 桐壺
「このきみをば、私物(わたくしもの)に思(おぼ)ほしかしづき給(たま)ふこと限りなし」
[訳] このお方(=光源氏)を、(帝(みかど)は)自分のたいせつな子としてお心にかけて大切にご養育なさることこの上もない。
④
君。▽人名・官名などの下に付いて、「…の君」の形で、その人に敬意を表す。
出典枕草子 清涼殿の丑寅のすみの
「宰相のきみぞ十ばかり、それもおぼゆるかは」
[訳] 宰相の君が(『古今和歌集』の歌の下の句を)十首ほど(申し上げるが、それぐらいでは)、それも思い浮かぶなどと言えるであろうか、いや、言えない。
⑤
遊女。
出典好色一代男 浮世・西鶴
「腰に付けたるはした銭を投ぐれば、きみたち声をあげて」
[訳] 腰に付けていたはした金を投げると、遊女たちは声をあげて。
あなた。▽対称の人称代名詞。親愛の意を表す。
出典伊勢物語 二三
「比べ来(こ)し振り分け髪も肩過ぎぬきみならずして誰(たれ)か上ぐべき」
[訳] ⇒くらべこし…。
き-み 【気味】
①
においと味。風味。
②
趣。味わい。
出典徒然草 一七四
「道を楽しぶよりきみ深きはなし」
[訳] (仏の)道を楽しむ以上に味わいの深いものはない。
③
心地。気分。◆②③は「きび」とも。
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