学研全訳古語辞典 |
くだ・る 【下る・降る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
おりる。(下流に)移る。くだる。
出典枕草子 うらやましげなるもの
「『…』と道に会ひたる人にうち言ひてくだり行きしこそ」
[訳] 「…」と道で出会った人に言って山をおりていったのは。
②
(雨や雪が)降る。
出典蜻蛉日記 下
「雨、昨日のゆふべよりくだり」
[訳] 雨がきのうの夕方から降り。
③
(都から地方に)行く。下向する。
出典更級日記 子忍びの森
「まづ胸あくばかりかしづきたてて、ゐてくだりて」
[訳] まず気持ちが晴れるほどあなたをことさら大切に育てあげて、伴って任地に下向して。
④
(京都で)南へ行く。▽内裏(だいり)が北にあることから。
出典大鏡 道長下
「西の大宮よりくだらせ給(たま)ひて」
[訳] 西の大宮大路を南に行っていらっしゃって。
⑤
下賜(かし)される。与えられる。▽上位の者から下位の者へ物が与えられる。
出典源氏物語 若菜上
「御かはらけくだり、若菜の御羹(あつもの)まゐる」
[訳] (源氏から)お杯が下賜され、源氏は若菜のお吸い物を召し上がる。
⑥
言い渡される。▽上位の者から下位の者へ伝えられる。
出典更級日記 竹芝寺
「『…』よしの宣旨(せんじ)くだりにければ」
[訳] 「…」という旨の宣旨が言い渡されたので。
⑦
時が移る。(ある時刻を)過ぎる。
出典源氏物語 藤裏葉
「未(ひつじ)くだる程に」
[訳] 午後二時を過ぎるころに。
⑧
(身分・品性・才能が)低くなる。劣る。落ちぶれる。
出典枕草子 懸想人にて来たるは
「それよりくだれる際(きは)は、皆さやうにぞある」
[訳] それよりも身分が低くなっている人々(の供人)は、みなこんな具合だ。
⑨
降伏する。
出典平家物語 七・木曾山門牒状
「攻むれば、必ずくだる」
[訳] 攻めると、必ず降伏する。
⑩
へりくだる。謙遜(けんそん)する。
出典雨月物語 吉備津の釜
「大人(うし)のくだり給ふこと、甚だし」
[訳] あなたが謙遜しなさることは、普通以上だ。
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