学研全訳古語辞典 |
さう 【候】
活用{さう/さう/さう/さう/さうへ/さうへ}
〔動詞の連用形、またはそれに助詞「て」「で」などが付いた形に付いて〕…ます。…です。…であります。▽丁寧の意を表す。
出典平家物語 九・宇治川先陣
「腹帯(はるび)の伸びて見えさうぞ。締め給(たま)へ」
[訳] (馬の)腹帯がゆるんで見えますよ。締めなさい。◆「さうらふ」の変化した語。
さう 【姓】
姓(せい)。「しゃう」とも。
出典更級日記 竹芝寺
「やがて武蔵(むさし)といふさうを得てなむありける」
[訳] そのまま武蔵という姓を得て住んでいた。
さ-う 【左右】
①
左と右。
出典源氏物語 若菜上
「舞台のさうに、楽人(がくにん)の平張(ひらば)りうちて」
[訳] 舞台の左右に、楽人のためのテントを張って。
②
あれこれ言うこと。とやかく言うこと。
出典平家物語 四・還御
「九条殿の御(おん)ぱからひのうへは、さうに及ばず」
[訳] 九条殿のお取り計らいである以上、あれこれ言うことはできない。
③
指示。指図。
出典平家物語 一・殿上闇討
「刀の実否(じつぷ)について咎(とが)のさうあるべきか」
[訳] 刀が本物かどうかによって、罪(にするかしないか)の指示があるべきではないか。
④
知らせ。
出典太平記 八
「そのさうを今や今やと待ちけるところに」
[訳] その知らせを今か今かと待っていたところに。
⑤
状況。ようす。
出典平治物語 中
「軍(いくさ)のさうを待つと見るは、ひがことか」
[訳] (あなたが)戦いの状況を待っていると見るのは、まちがいか。
さう 【相】
①
様相。外見。ありさま。▽外面に現れた姿・形。
出典徒然草 一四三
「愚かなる人はあやしく異なるさうを語りつけ」
[訳] 愚かな人は、不思議な、常と異なる様相を付け加えて話し。
②
外面に現れて、ものの吉凶を示すもの。人相・家相・地相など。
出典源氏物語 桐壺
「帝王の上(かみ)なき位にのぼるべきさうおはします人の」
[訳] 帝(みかど)というそれより上のない位に進むはずの人相がおありになる人で。
さう 【笙】
「しゃう(笙)」に同じ。
さう 【箏】
「さう(箏)のこと(琴)」に同じ。「しゃう」とも。
さう 【草】
①
書体の草書。
②
「草仮名(さうがな)」の略。
③
下書き。
出典徒然草 二三八
「常在光院のつき鐘の銘は、在兼(ありかね)の卿(きやう)のさうなり」
[訳] 常在光院のつり鐘の銘文は、在兼卿の下書きである。
さう 【荘・庄】
「しゃう(荘)」に同じ。
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