学研全訳古語辞典 |
つ・む
活用{ま/み/む/む/め/め}
前歯でかじる。
出典枕草子 にげなきもの
「鬚(ひげ)がちなるものの椎(しひ)つみたる」
[訳] (似つかわしくないものは)ひげ面の者が椎(しい)の実を前歯でかじっているの。
つ・む 【抓む】
活用{ま/み/む/む/め/め}
①
つまむ。
出典万葉集 四四〇八
「御裳(みも)の裾(すそ)つみ挙げ」
[訳] (母は)裳の裾をつまみあげ。
②
つねる。
出典万葉集 三九四〇
「わが背子(せこ)がつみし手見つつ」
[訳] 私の夫がつねった手を見ながら。
つ・む 【積む】
活用{ま/み/む/む/め/め}
積もる。
出典猿蓑 俳諧
「下京(しもぎやう)や雪つむ上の夜の雨―凡兆」
[訳] ⇒しもぎゃうや…。
活用{ま/み/む/む/め/め}
①
重ねる。積み重ねる。
出典枕草子 僧都の御乳母のままなど
「馬づかさの御秣(みまくさ)つみて侍(はべ)りける家より」
[訳] 馬寮のかいばを積み重ねてありました家から。
②
(船や車などに荷を)載せる。
出典徒然草 一七七
「鋸(のこぎり)のくづを車につみて、多く奉りたりければ」
[訳] 鋸で切った切りくずを車に積んで、たくさん差し上げたので。
③
ふやす。増す。
出典平家物語 三・少将都帰
「いましばらく念仏の功をもつむべう候へども」
[訳] もう少し念仏の功徳(くどく)を増すほうがよいのですが。
つ・む 【詰む】
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
勤務場所に控えている。詰める。
出典冥途飛脚 浄瑠・近松
「これのは今朝から庄屋(しやうや)殿へつめられ」
[訳] うちの人は今朝から庄屋殿のところへ詰めておられ。
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
①
ぎっしりと入れる。いっぱいにする。
出典茶壺 狂言
「まんまと茶をつめて下りまする所に」
[訳] 首尾よく茶をぎっしりと入れて下ります所に。
②
すき間に物を入れて動けなくする。
出典落窪物語 二
「打ちたたき、押し引けど、内外(うちと)につめてければ、ゆるぎだにせず」
[訳] たたいたり、押したり引いたりしても、内にも外にもすき間に物を入れ動けなくしてあるので、ゆらぐことさえない。
③
(相手を)行き詰まらせる。追い詰める。
出典徒然草 二四三
「問ひつめられて、え答へずなり侍(はべ)りつ」
[訳] 問い詰められて、答えられなくなってしまいました。
④
短くする。縮める。
出典風姿花伝 二
「腰膝(ひざ)を屈(かが)め、身をつむれば」
[訳] 腰や膝をかがめ、からだを縮めると。
⑤
(家計を)切り詰める。倹約する。
出典阿波鳴渡 浄瑠・近松
「わしが身をつめ、三度つける油も一度つけ」
[訳] 私が身代を切り詰め、三度つける油も一度だけつけ。
つ・む 【集む】
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
集める。
出典万葉集 三六〇
「潮干(ひ)なば玉藻刈りつめ」
[訳] 潮が引いたら海草を刈り集めよ。◇「つめ」は古い命令形。
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