学研全訳古語辞典 |
はた 【二十】
にじゅう。
出典古今集 仮名序
「すべて千歌(ちうた)はた巻(まき)、名づけて古今和歌集といふ」
[訳] 全部合わせて千首の歌、二十巻、名づけて『古今和歌集』という。
はた 【将】
①
…もまた。やはり。さらにまた。▽二つの事柄の並立を表す。
出典枕草子 春はあけぼの
「日入り果てて、風の音(おと)、虫の音(ね)など、はた言ふべきにあらず」
[訳] 日がすっかり沈んでしまって、(耳に聞こえてくる)風の音や虫の鳴き声など(の趣のあることは)、さらにまた言うまでもない。
②
しかしながら、やはり。そうはいうものの。さりとて。▽二つの事柄の対立を表す。
出典紫式部日記 消息文
「かう読ませ給(たま)ひなどすること、はた、かのもの言ひの内侍(ないし)は、え聞かざるべし」
[訳] こうして(中宮様が私に漢籍を)お読ませになったりしていることまでは、そうはいうものの、あの口うるさい内侍は、まだ聞きつけていないだろう。
③
〔下に打消の語を伴って〕言うまでもなく。おそらく。決して。
出典今昔物語集 二五・九
「この浅き道、はたえ知られじ」
[訳] この(水の深さの)浅い道は、おそらくお知りにならないだろう。
④
もしかすると。ひょっとして。
出典日本書紀 崇峻
「はた、敗らるること無からむや」
[訳] もしかすると、うち負かされることはないだろうか。
⑤
なんとまあ。それにしてもまあ。
出典源氏物語 帚木
「いで、あな悲し。かくはたおぼしなりにけるよ」
[訳] まあ、ほんとうに悲しいこと。こんなにまでそれにしてもまあご決心なさってしまったことだね。
あるいは。それとも。
出典奥の細道 福井
「『いかに老いさらぼひてあるにや、はた死にけるにや』と人に尋ね侍(はべ)れば」
[訳] 「(今では)どんなに老いぼれているのだろうか、あるいは死んだのだろうか」と人に尋ねますと。
はた 【幡・旗】
①
仏・菩薩(ぼさつ)の威徳を示すため、法会(ほうえ)の際に用いる飾り。◇仏教語。
②
朝廷の儀式や軍陣で、飾りや標識として用いる旗。◆「ばん」とも。
はた 【機・服】
布を織る機械。また、機で織った布。
はた 【端】
①
へり。ふち。
出典枕草子 にくきもの
「老いばみたる者こそ火桶(ひをけ)のはたに足をさへもたげて」
[訳] 年寄りじみた者がきまって火鉢のふちに(手ばかりか)足まで持ちあげて。
②
わき。そば。ほとり。
出典徒然草 八九
「小川(こがは)のはたにて、音に聞きし猫また」
[訳] 小川(=川の名)のほとりで、話に聞いていた猫またが。
はた 【鰭】
魚のひれ。
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