学研全訳古語辞典 |
うちしめり…
分類和歌
「うちしめりあやめぞかをるほととぎすなくや五月(さつき)の雨の夕暮れ」
出典新古今集 夏・藤原良経(ふぢはらのよしつね)
[訳] しっとりと湿った空気に、軒の菖蒲(しようぶ)が香っているよ。低く垂れ込めた梅雨空にはほととぎすが鳴く雨の夕暮れよ。
鑑賞
「ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな」(『古今和歌集』)〈⇒ほととぎすなくやさつきの…。〉を本歌としている。あやめはさといも科の菖蒲のことで、花菖蒲とは異なる植物。茎や葉に芳香がある。五月の節句に、軒にさして邪気を払う風習があり、五月には欠かせない景物の一つ。梅雨どきの鬱々(うつうつ)とした気分が、あやめの香とほととぎすの声によって感覚的に表現された一首。本歌の恋の雰囲気を濃厚に漂わせている。
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