学研全訳古語辞典 |
うつせみ
(一)
【現人・現身】
①
この世の人。生きている人。
出典万葉集 二一〇
「うつせみと思ひし妹(いも)が」
[訳] この世の人と思っていた妻が。
②
この世。現世。
出典万葉集 四二一一
「血沼壮士(ちぬをとこ)莬原壮士(うなひをとこ)のうつせみの名を争ふと」
[訳] 血沼壮士と莬原壮士とがこの世での名誉を争うと言って。
(二)
【空蟬】蟬(せみ)のぬけ殻。蟬。
出典源氏物語 空蟬
「うつせみの身を変へてける木(こ)の下に」
[訳] 蟬のぬけ殻に姿を変えてしまった木の下で。
語の歴史
「現(うつ)し臣(おみ)」の変化した「うつそみ」を、『万葉集』で「空蟬」「虚蟬」などと表記したところから、中古以降(二)の意味が生じた。
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