学研全訳古語辞典 |
うち 【内】
①
中。内側。内部。屋内。
出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
「帳(ちやう)のうちよりも出(い)ださず」
[訳] (翁(おきな)はかぐや姫を)垂れぎぬの中からさえも出さない。
②
宮中。内裏(だいり)。
出典源氏物語 桐壺
「今はうちにのみさぶらひ給(たま)ふ」
[訳] (源氏は)今は宮中にばかりおいでになる。
③
天皇。帝(みかど)。主上。
出典紫式部日記 消息文
「うちの上の、源氏の物語、人に読ませ給(たま)ひつつ」
[訳] 天皇様が、『源氏物語』をだれかに声を出して唱えさせになられながら。
④
心の中。胸の内。
出典徒然草 一〇八
「うちに思慮なく、外(ほか)に世事なくして」
[訳] 心の中に考えることがなく、外に世間の俗事がないようにして。
⑤
間。うち。▽ある期間内。
出典土佐日記 二・一六
「五年六年(いつとせむとせ)のうちに、千年(ちとせ)や過ぎにけむ」
[訳] 五、六年の間に、千年が過ぎてしまったのだろうか。
⑥
中。▽ある範囲内。
出典土佐日記 二・一六
「思ひ恋しきがうちにも」
[訳] 恋しい思いが多くある中でも。
⑦
以内。以下。▽数を示す語とともに用いる。
出典方丈記
「高さは七尺がうちなり」
[訳] (建物の)高さは七尺以下である。
⑧
家。建物。
出典徒然草 四四
「山のきはに惣門(そうもん)のあるうちに入りぬ」
[訳] (若い男は)山のすそに正門がある家に入った。
⑨
夫。妻。
出典浮世風呂 滑稽
「わしらがうちなんぞは出好きでの」
[訳] 私の夫は出かけるのが好きでね。
⑩
仏教。▽儒教を「そと」「ほか」というのに対する。
出典平家物語 六・新院崩御
「うちには十戒を保ち、外(ほか)には五常を乱らず」
[訳] 仏教については十の戒めを守り、儒教については五つの徳目を乱さなく。
うち- 【打ち】
〔動詞に付いて、語調を整えたり下の動詞の意味を強めて〕
①
ちょっと。ふと。「うち見る」「うち聞く」
②
すっかり。「うち絶ゆ」「うち曇る」
③
勢いよく。「うち出(い)づ」「うち入る」
語法
動詞との間に助詞「も」が入ることがある。「うちも置かず見給(たま)ふ」(『源氏物語』)〈下にも置かずにごらんになる。〉
注意
「打ち殺す」「打ち鳴らす」のように、打つの意味が残っている複合語の場合は、「打ち」は接頭語ではない。打つ動作が含まれている場合は動詞、含まれていない場合は接頭語。
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