学研全訳古語辞典 |
え
①
〔下に打消の語や反語表現を伴って〕とても…でき(ない)。
出典宇治拾遺 三・一七
「恐れにて候へば、え申し候はじ」
[訳] 恐れ多いことでございますので、とても申し上げられません。
②
〔下に肯定の表現を伴って〕うまく…できる。よく…する。
出典古事記 景行
「その荒波おのづから伏(な)ぎて、御船え進みき」
[訳] その荒波は自然に静まって、(倭健命(やまとたけるのみこと)の)お船はうまく進むことができた。◇上代語。
語法
①は会話文中では「今宵(こよひ)はえなむ」(『枕草子』)〈今夜はとても(参れません)。〉のように、「え」の下の叙述の言葉が省略されることがある。
参考
下二段動詞「得(う)」の連用形の副詞化。中古以降下に「ず・じ・で・まじ」などがくる①が生まれる。
え
ああ。▽感嘆・嘆息など感動を表すときに発する語。
出典日本書紀 天智
「え苦しゑ」
[訳] ああ苦しいよ。◆上代語。
え
《接続》体言に付く。〔呼びかけ〕…よ。
出典万葉集 四三四〇
「父母(とちはは)え斎(いは)ひて待たね」
[訳] 父母よ、心身を清めて待っていてほしい。◆上代東国方言。一般には「よ」。終助詞とする説もある。
え
《接続》文節の切れ目、文末に付く。
①
〔呼びかけ〕…よ。
出典浮世風呂 滑稽
「おかみさんえ、ちっとお流し申しませう」
[訳] おかみさんよ、ちょっと(体を)お流し申し上げましょう。
②
〔親しみをこめて相手に軽く念押し〕…よ。…な。
出典幼稚子敵討 歌舞
「皆さん許さんせえ」
[訳] 皆さんお許しくださいよ。◆間投助詞とする説もある。近世語。
え
受身・可能・自発の助動詞「ゆ」の未然形・連用形。
え 【得】
動詞「う」の未然形・連用形。
え 【枝】
(草木の)えだ。
え 【江】
①
入り江。海や湖などの一部が陸地に細く入り込んだところ。
②
大河。河。
え 【疫】
流行性の病気。疫病。疫病(えやみ)。
え 【笑・餌・飢】
⇒ゑ
え 【縁】
「えん(縁)」に同じ。◆「えん」の撥音(はつおん)「ん」が表記されない形。
え 【重・上・戸・方・家】
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