学研全訳古語辞典 |
おほ・す 【仰す】
{語幹〈おほ〉}
①
言いつける。命じる。
出典枕草子 神のいたう鳴るをりに
「大将おほせて、『おり』とのたまふ」
[訳] 大将が命じて「下りよ」とおっしゃる。
②
〔「おほせらる」「おほせたまふ」の形全体で〕おっしゃる。▽「言ふ」の尊敬語。
出典大鏡 道長下
「よの人いかがたへんとおほせられけれ」
[訳] 世間の人はどうしてたえられるだろうかと(村上天皇は)おっしゃった。
③
〔単独で用いられて〕おっしゃる。▽「言ふ」の尊敬語。
出典平家物語 一・鹿谷
「法皇『あれはいかに』とおほせければ」
[訳] 法皇が「いったいどうしたことか」とおっしゃったところ。◇中世以降の用法。
おほ・す 【果す】
活用{せ/せ/す/する/すれ/せよ}
〔動詞の連用形に付いて〕…遂げる。…果たす。…終える。
出典平家物語 一・俊寛沙汰鵜川軍
「この事しおほせつるものならば」
[訳] この事をなし遂げたならば。
おほ・す 【生ほす】
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
①
生育させる。伸ばす。生やす。
出典源氏物語 薄雲
「この春よりおほす御髪(ぐし)」
[訳] この春から伸ばしているお髪は。
②
養育する。
出典讚岐典侍 上
「あやしのきぬの中よりおほし参らせて」
[訳] 産着のうちから養育し申し上げて。
おほ・す 【負ほす・課す】
活用{せ/せ/す/する/すれ/せよ}
①
背負わせる。
出典古事記 神代
「大穴牟遅神(おほなむぢのかみ)に袋をおほせ」
[訳] 大国主命(おおくにぬしのみこと)に袋を背負わせ。
②
(責めを)負わせる。(罪を)かぶせる。
出典源氏物語 少女
「罪をおほせ給(たま)ふは」
[訳] 罪をかぶせなさるのは。
③
名づける。命名する。
出典万葉集 三三九
「酒の名を聖(ひじり)とおほせし」
[訳] 酒の名を聖と名づけた。
④
(傷・害を)負わせる。
出典徒然草 八七
「あまたして手おほせ」
[訳] 大勢で(男に)傷を負わせ。
⑤
(労役・債務・租税などを)課する。負担させる。◆「お(負)はす」の変化した語。
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