学研全訳古語辞典 |
なでふ
①
何という。どのような。いかなる。▽疑問の意を表す。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「こは、なでふ事、のたまふぞ」
[訳] これはまあ、何ということをおっしゃるのか。
②
なにほどの。特にこれという。
出典枕草子 にくきもの
「なでふことなき人の、笑(ゑ)がちにてものいたう言ひたる」
[訳] 特にこれということのない人が、にこにこしてむやみにしゃべっている(のはしゃくにさわる)。
③
〔下に助詞「か」を伴って〕どういう…(か、いや、…ない)。どれほどの…(か、いや、…ない)。▽反語の意を表す。
出典枕草子 あはれなるもの
「ただ清き衣(きぬ)を着て詣(まう)でむに、なでふ事かあらむ」
[訳] ただもうきれいな衣服を着て参詣(さんけい)しようというのに、どれほどの支障があろうか、いや、支障はない。
なんで。どうして。▽疑問・反語の意を表す。
出典徒然草 二三一
「なでふ百日の鯉(こひ)を切らんぞ」
[訳] どうして百日の鯉を(料理しているなどという口実をつけて)切ろうか、いや、そんな必要はない。
参考
「なにといふ」↓「なにてふ」↓「なんでふ」↓「なでふ」(撥音(はつおん)「ん」が表記されない形)と変化してできた語。
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