学研全訳古語辞典 |
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《接続》体言に付く。
①
〔方向〕…の方に。…に向かって。
出典土佐日記 一二・二七
「京へ帰るに女子(をんなご)のなきのみぞ悲しび恋ふる」
[訳] 京の都に向かって帰るのだが、(この土佐で死んだ)娘がここにいないのだけが悲しく恋しく思われる。
②
〔帰着点〕…に。
出典徒然草 五三
「また仁和寺(にんなじ)へ帰りて、親しき者、老いたる母など枕上(まくらがみ)に寄りゐて」
[訳] また仁和寺に帰って、親しい者や年取った母などが枕元に集まって座って。
③
〔対象〕…に対して。…に。
出典宇治拾遺 一二・二二
「この由を院へ申してこそは」
[訳] このことを院に申し上げて(なんとかしよう)。
参考
(1)語源は名詞「辺(へ)」(=「あたり」の意)と言われる。(2)「へ」と「に」の違い 「へ」は奈良時代には未発達で、「に」が一般的に用いられた。平安時代には、移動の方向や場所を示すときに「へ」を、その場所に行き着いているときには「に」を用いた。「へ」の②③の意味は中世に生じた。
へ
反復継続の助動詞「ふ」の已然形・命令形。
へ 【上】
〔「…のへ」の形で〕うえ。ほとり。
出典万葉集 八七二
「佐用比売(さよひめ)がこの山のへに領巾(ひれ)を振りけむ」
[訳] 佐用姫がこの山の上で領巾(=肩にかけた白い薄布)を振ったのだろう。
へ 【家】
家(いえ)。◆「いへ」の変化した語。
へ 【戸】
戸籍上の家。また、それを数える語。
へ 【経】
動詞「ふ」の未然形・連用形。
へ 【舳】
(船の)へさき。船首。[反対語] 艫(とも)。
へ 【辺・方】
①
辺り。ほとり。そば。
出典万葉集 四〇九四
「大君のへにこそ死なめ」
[訳] (私は)天皇のそばでこそ死のう。
②
海辺。海岸。
出典日本書紀 神代下
「沖つ藻はへには寄れども」
[訳] 沖の藻は海辺に近寄るけれども。[反対語] 沖(おき)。
-へ 【辺】
…の辺り。…の方。「沖へ」「末へ」
-へ 【重】
重なったものを数える語。「千(ち)へ」「八(や)へ垣」
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