学研全訳古語辞典 |
まこと
分類文芸
日本の文芸全般を通じての、根本的な美的理念。真実の姿・感情を尊重し理想とする精神で、感情と理性とが自然に一体となった境地のこと。特に『万葉集』を中心とする上代文学に見られ、文学用語としては『古今和歌集』の仮名序に現れるのが最初。平安時代の「もののあはれ」や、中世の「幽玄」などの美的理念の基調ともなった。江戸時代の俳論や歌論などにもしばしば説かれ、その根底になっている。
ま-こと 【真・実・誠】
①
真実。事実。本当。
出典徒然草 七三
「世に語り伝ふること、まことはあいなきにや、多くはみな虚言(そらごと)なり」
[訳] 世間で語り伝えていることは、真実はつまらないのであろうか、多くはみんなつくりごとである。
②
誠実。誠意。真心。
出典徒然草 一四一
「あづま人こそ、言ひつることは頼まるれ。都の人は、ことうけのみよくて、まことなし」
[訳] 東国の人は言ったことは頼みになる。都の人は、返事だけがよくて、誠実さがない。
実に。本当に。
出典万葉集 二四五
「聞くがごとまこと貴(たふと)く奇(くす)しくも神さびをるかこれの水島」
[訳] かねて聞いていたように、本当に貴く不思議に神々しい姿をしていることだよ、この水島は。
そうそう。あっ、そうだ。
出典宇治拾遺 八・三
「まことまこと、ありつる鉢を忘れて、取り出でずなりつる」
[訳] そうそう、さきほどの鉢を忘れて、取り出さないままにしてしまった。
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