学研全訳古語辞典 |
まゐら・す 【参らす】
{語幹〈まゐら〉}献上する。差し上げる。奉る。▽「与ふ」「やる」の謙譲語。
出典竹取物語 ふじの山
「薬の壺(つぼ)に御文(おほんふみ)そへてまゐらす」
[訳] 薬の壺に(かぐや姫の)お手紙を添えて(帝(みかど)に)献上する。
活用{せ/せ/す/する/すれ/せよ}
〔動詞の連用形に付いて〕お…申し上げる。お…する。▽謙譲の意を添える。
出典平家物語 九・敦盛最期
「たすけまゐらせんとは存じ候(さうら)へども」
[訳] お助け申し上げようとは存じますが。
語の歴史
中古中期ごろから用例が見られる。当時は同意・同用法の「奉る」「聞こゆ」「申す」がおもで「参らす」がよく用いられるようになるのは中古の末期ごろからである。中世以降にも多用されるが、やがて「まらする」「まっする」に変化し、現代語の丁寧語の助動詞「ます」になる。
まゐら-・す 【参らす】
分類連語
(一)
〔「す」が使役の意の場合〕
①
参上させる。参内(さんだい)させる。
出典源氏物語 桐壺
「急ぎまゐらせて御覧ずるに」
[訳] (帝(みかど)は、若宮を)急いで参内させてご覧になると。
②
差し上げさせる。奉仕させる。
出典源氏物語 柏木
「待ちいで給(たま)ひて、加持(かぢ)まゐらせむとし給ふ」
[訳] (祈禱(きとう)師を)お待ちになって、加持をして差し上げさせようとなさる。
(二)
〔「す」が尊敬の意の場合、下に「給ふ」を伴って〕参上あそばされる。⇒まゐらせたまふ
注意
同じでき方だが、一語化した動詞「参らす」と混同しないこと。使役・尊敬の意味が生きている場合には、この連語か、または連語「参らせ給ふ」。
なりたち
動詞「まゐる」の未然形+助動詞「す」
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