学研全訳古語辞典 |
やは
どうして…(であろうか)。▽文末を連体形で結び、反語の意を表す。
出典太平記 三四
「にはかに構へたる城なれば、暫(しばら)くもやはささふるとて」
[訳] いそいで建てた城なので、ほんのしばらくでもどうして持ちこたえるだろうかといって。◆係助詞「やは」の副詞化した語。
や-は
《接続》種々の語に付く。文末に用いられる場合は、活用語の終止形・已然形に付く。
①
〔反語〕…(だろう)か、いや、…ない。
出典枕草子 清涼殿の丑寅のすみの
「このごろはかやうなることやは聞こゆる」
[訳] このごろはこのようなことは耳にするだろうか、いや、耳にすることはない。
出典伊勢物語 二三
「もろともに言ふかひなくてあらむやは」
[訳] (女と)一緒にふがいない状態でいられようか、いや、いられない。
②
〔疑問〕…か。
出典源氏物語 夕顔
「いにしへもかくやは人のまどひけむ」
[訳] 昔もこのように人は迷ったのであろうか。
③
〔「やは…ぬ」の形で勧誘・希望〕…ないか。…てくれたらいいのに。▽「やは…ぬ」の「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形。
出典源氏物語 東屋
「みづからやはかしこに出(い)で給(たま)はぬ」
[訳] ご自身であそこにおいでにならないか。
語法
係り結びの法則 「やは」は文中にも文末にも用いられるが、文中に用いられた場合は、係り結びの法則で、「や」と同様に、文末の活用語は連体形となる。
参考
係助詞「や」に係助詞「は」の付いたもの。上代の「やも」に代わり、中古に多用。多くは反語の意を表し、疑問の意に用いられたのはごくまれである。
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