学研全訳古語辞典 |
はべ・り 【侍り】
{語幹〈はべ〉}
①
おそばにいる。ひかえている。お仕えする。▽「あり」「居(を)り」の謙譲語。
出典古今集 離別
「夕さりまではべりてまかり出(い)でける折に」
[訳] 夕方までひかえていて退出したときに。
②
あります。ございます。おります。▽「あり」「居(を)り」の丁寧語。
出典源氏物語 若紫
「ここにはべりながら、御とぶらひにもまうでざりけるに」
[訳] ここにおりますのに、お見舞いにもうかがいませんでしたが。◆「はんべり」とも。
活用{ら/り/り/る/れ/れ}
①
〔動詞の連用形に付いて〕…ます。…(て)おります。▽丁寧の意を表す。
出典源氏物語 桐壺
「今までとまりはべるがいと憂きを」
[訳] 今まで生き残っておりますのがたいへんつらいので。
②
〔形容詞・形容動詞・助動詞の連用形に付いて〕…(で)ございます。…(で)あります。▽補助動詞「あり」の丁寧語。
出典源氏物語 帚木
「かの撫子(なでしこ)のらうたくはべりしかば」
[訳] あの撫子(=かわいがっている娘、玉鬘(たまかずら))がかわゆうございましたので。◆「はんべり」とも。
参考
中古に丁寧語化したが、[一]②や[二]①に見るように、自己の存在や動作をいうのに用いられることが多く、謙譲語の名残を残している。その丁寧語の例は、会話文・手紙文に限られ、中世には擬古文で地の文に用いられる程度になった。
はんべ・り 【侍り】
活用{ら/り/り/る/れ/れ}
「はべり」に同じ。
出典一寸法師 御伽
「津の国難波(なには)の里に、おほぢと、うばとはんべり」
[訳] 摂津の国難波の里に、老翁と老婆とがおります。◆「はべり」に撥音(はつおん)「ん」が挿入された形という。
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