学研全訳古語辞典 |
く・る 【呉る】
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
(相手が自分に物を)くれる。
出典徒然草 一一七
「良き友三つあり。一つには物くるる友」
[訳] よい友には三種類ある。その一つは物をくれる友。
②
(自分が相手に物を)与える。やる。
出典土佐日記 一・七
「この長櫃(ながびつ)の物は、みな人、童(わらは)までにくれたれば」
[訳] この長櫃の中の物は、(船中の)全員、子供にまで与えたので。
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
〔動詞の連用形に助詞「て」が付いたものに付いて〕
①
…(て)くださる。
出典太平記 一八
「いかにもして杣山(そまやま)の城に入(い)れ参らせてくれよ」
[訳] どうにかして杣山の城にお入れ申し上げてください。
②
…(て)やる。
出典太平記 八
「射てくれ候はん」
[訳] 射てやりましょう。
く・る 【暗る・眩る】
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
心が暗く沈む。
出典源氏物語 桐壺
「闇(やみ)にくれて臥(ふ)し給(たま)へる程に」
[訳] (嘆きの)やみの中に心が暗く沈んで悲しみにくれなさっているうちに。
②
(悲しみなどにうちひしがれて)目の前が真っ暗になる。目がくらむ。
出典平家物語 九・敦盛最期
「目もくれ、心も消え果てて」
[訳] 目もくらみ、気も遠くなってしまって。
③
(涙で)目が曇る。目がかすむ。
出典源氏物語 桐壺
「涙にくるる秋の月」
[訳] ⇒くものうへも…。
④
(悲しみや欲望のために動転して)思慮を失う。思いまどう。
出典源氏物語 若菜下
「御心もくれてわたり給(たま)ふ」
[訳] お心も思いまどっていらっしゃる。
く・る 【暮る】
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
(日が)暮れる。
出典伊勢物語 九
「はや舟に乗れ、日もくれぬ」
[訳] 早く舟に乗れ、日が暮れてしまう。
②
(季節や年月が)終わりになる。
出典奥の細道 出発まで
「やや年もくれ」
[訳] やがてその年も終わり。
くる 【来る】
動詞「来(く)」の連体形。
出典徒然草 一九
「やうやう夜寒(よさむ)になるほど、雁(かり)鳴きてくるころ」
[訳] しだいに夜気が寒くなる時分、雁が鳴いて来るころ。
く・る 【繰る・絡る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
(糸など細長い物を)たぐり寄せる。また、そうして物に巻き取る。
出典万葉集 一三四六
「女郎花(をみなへし)生ふる沢辺の真葛原(まくづはら)いつかもくりてわが衣(きぬ)に着む」
[訳] おみなえしが生えている沢のほとりのくずの原のくずを、いつ(糸にして)たぐり寄せ(織って)自分の着物にして着るのだろうか。
②
順々に引き出す。順々に送り出す。
出典大鏡 時平
「物をくり出(い)だすやうに言ひ続くるほどぞ」
[訳] 糸か何かを順々に引き出すように(次から次へと)話し続けるようすは。
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