学研全訳古語辞典 |
い・く 【生く】
活用{か/き/く/く/け/け}
生きる。生存する。
出典更級日記 竹芝寺
「竹芝のをのこに、いけらむ世のかぎり、武蔵(むさし)の国を預けとらせて」
[訳] 竹芝の男に、今後生きているかぎり、武蔵の国を預け与えて。
活用{き/き/く/くる/くれ/きよ}
生きる。生存する。助かる。
出典徒然草 五三
「命ばかりは、などかいきざらん」
[訳] 命だけは、どうして助からないことがあろうか、いや、助かるだろう。
{語幹〈い〉}
①
生かす。生存させる。
出典蜻蛉日記 上
「いで、なほここながら死なむと思へど、いくる人ぞ、いとつらきや」
[訳] それでもやはりここにいるままで死にたいと思うけれど、私を生かす人がいるのは、たいそうつらい。
②
(草花などを)器にさす。いける。
出典野ざらし 俳文・芭蕉
「つつじいけてその陰に干鱈(ひだら)さく女」
[訳] つつじを桶(おけ)にいけて、その傍らで食事の用意に干した鱈を裂く女がいる。◇「活く」とも書く。
語の歴史
自動詞は、上代・中古が四段、中世から上二段、他動詞は中古から下二段活用として用いられる。また、下二段活用から現代語「生ける」が生じた。
いく- 【生く】
名詞に付いて、生命力の盛んなのをほめたたえる意を表す。「いく大刀(たち)」「いく魂(むすひ)」
い・く 【行く・往く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
行く。
②
うまくはかどる。
③
満足する。納得がいく。
出典土佐日記 二・五
「幣(ぬさ)には御心のいかねば」
[訳] 幣では(神様の)お心に満足がいかないから。
参考
(1)「ゆく」のほうが広く用いられたが、中古になって、「いく」「ゆく」が併用されるようになった。(2)和歌では、「限りとて別るる道の悲しきにいかまほしきは命なりけり」(『源氏物語』)〈⇒かぎりとて…。〉のように、「生く」とかけて用いることが多い。
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