学研全訳古語辞典 |
くま-な・し 【隈無し】
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
①
かげりがない。▽満月のようす。
出典徒然草 一三七
「花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは」
[訳] 桜の花は満開のときに、月はかげりがない満月のときにだけ見るものであろうか、いや、そうではない。
②
陰になるところがない。▽光がすみずみまで照らしているようす。
出典源氏物語 薄雲
「くまなき夕日にいとどしく清らに見え給(たま)ふを」
[訳] 陰になるところのない夕日に(照らされ)一段と美しくお見えなさるのを。
③
抜け目ない。精通している。ゆきとどいている。
出典源氏物語 夕顔
「おのれもくまなき好き心にて」
[訳] 自分も抜け目のない色好みの心で。
④
あけひろげだ。
出典源氏物語 夢浮橋
「僧都(そうづ)の御心は、聖(ひじり)といふ中にも、あまりくまなく物し給(たま)へば」
[訳] 僧都のご気性は、同じ聖の中でも、あまりあけひろげでいらっしゃるので。
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