学研全訳古語辞典 |
さと 【里】
①
人里。里。集落。▽生活の場として人家が集まっている所。
出典万葉集 一三一
「この道の八十隈(やそくま)ごとに万(よろづ)たびかへりみすれどいや遠にさとは離(さか)りぬ」
[訳] ⇒いはみのうみ…。
②
上代の地方行政区画の一つ。人家五十戸を一つの「里」として、「郡(こほり)」の下に置かれた。のち「郷」と書いた。
③
自分の住んでいる所。住んだことのある土地。郷里。ふるさと。
出典更級日記 鏡のかげ
「知りたりし人、さと遠くなりて音もせず」
[訳] 知り合いだった人も、私の住む所が遠く離れたので訪れもしない。
④
実家。宮仕えの者の自宅。▽「内裏(うち)」に対して、宮仕えの者が自分の実家をさしていう。
出典源氏物語 若紫
「内裏(うち)にてもさとにても、昼はつくづくとながめ暮らして」
[訳] 宮中でも自宅でも、昼はしみじみともの思いにふけって過ごして。
⑤
実家。嫁・養子・奉公人などの実家、生家。
⑥
(都や都会に対しての)いなか。地方。在所。
出典古今集 雑下・詞書
「深草のさとに住み侍(はべ)りて、京へまうで来(く)とて」
[訳] 深草の里(=いなか)に住んでおりまして、京まで参りますといって。
⑦
(寺に対して)俗世間。
⑧
子供を預けて養ってもらう家。
⑨
遊里。色里。◇近世語。
さ-と 【颯と】
①
さっと。ぱっと。▽その動作・状態が瞬時に行われるさま。
出典源氏物語 早蕨
「風のさと吹き入るるに」
[訳] 風がさっと吹き入ると。
②
どっと。わっと。▽多人数が一度に声を出すさま。
出典枕草子 小白河といふ所は
「みな何となくさと笑ふ声」
[訳] みな何となくどっと笑う声。
参考
中世以降は、「さっと」の形が普通になる。
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