学研全訳古語辞典 |
ただ-し 【但し】
①
とはいうものの。しかしながら。もっとも。
出典竹取物語 竜の頸の玉
「仰せの事はいとも尊し。ただし、この玉たはやすくえ取らじを」
[訳] おっしゃる事はとても重大に受けとめるべきことだ。とはいうものの、この玉はたやすくは取れはしないだろうに。
②
もしかしたら。あるいは。▽前文を受け、推量や疑問の内容を加えることを表す。
出典徒然草 二〇二
「本文(もとぶみ)も見えず。ただし、当月、諸社の祭りなき故(ゆゑ)にこの名あるか」
[訳] (十月を神無月という理由は)典拠となる書物にも見えない。もしかしたら、この月に諸社のお祭りがないので、この名があるのか。
③
それとも。あるいは。
出典合柿 狂言
「その柿(かき)は進上物か、ただし商ひ物か」
[訳] その柿は進物か、それとも売り物か。◆副詞「ただ」に副助詞「し」がついて一語化したもの。
ただ・し 【正し】
活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
①
正当だ。善だ。正しい。
出典古今集 仮名序
「これは、事の調ほり、ただしきをいふなり」
[訳] この歌は事柄が備わり、正しいのをいうのである。
②
きちんとしている。整っている。
出典平家物語 五・物怪之沙汰
「束帯ただしき上﨟(じやうらふ)」
[訳] 束帯がきちんとしている高貴な人。
③
道理に合っている。道徳に合っている。正しい。
出典平家物語 五・富士川
「おのおの礼儀をただしうして」
[訳] それぞれ礼儀を正しくして。◇「ただしう」はウ音便。
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