学研全訳古語辞典 |
な-く-に
分類連語
①
…ないことだなあ。▽文末に用いて、打消に詠嘆の意を込めて言い切る。
出典万葉集 二六五
「苦しくも降り来る雨か神(みわ)が崎(さき)狭野(さの)の渡りに家もあらなくに」
[訳] 困ったことに降ってきたにわか雨だなあ。ここ三輪の崎の狭野の渡し場には雨宿りする家もないことだなあ。
②
…ないことなのに。…ないのに。▽文末・文中で用いて、打消に、逆接の意を込めて言い切ったり下に続けたりする。
出典古今集 雑上・伊勢物語八二
「あかなくにまだきも月の隠るるか山の端(は)にげて入れずもあらなむ」
[訳] ⇒あかなくに…。
③
…ないのだから。…ない以上は。▽倒置表現の和歌の末尾に用いて、打消に理由の意を添える。
出典古今集 雑上
「誰(たれ)をかも知る人にせむ高砂(たかさご)の松も昔の友ならなくに」
[訳] ⇒たれをかも…。
語法
活用語の未然形に付く。
参考
(1)上代に盛んに用いられたが、中古以降は衰えた。主として和歌に用いられる。(2)「なくに」の「に」については、格助詞とする説、接続助詞とする説、間投助詞とする説などがある。
なりたち
打消の助動詞「ず」の上代の未然形+接尾語「く」+助詞「に」
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