学研全訳古語辞典 |
な・く
活用{か/き/く/く/け/け}
(一)
【鳴く・啼く】鳥・獣・虫などが声を立てる。鳴く。
出典奥の細道 旅立
「行く春や鳥なき魚(うを)の目は涙―芭蕉」
[訳] ⇒ゆくはるやとりなきうをの…。
(二)
【泣く・哭く】人が悲しみなどで声を立てたり涙を流したりする。泣く。
【泣く・哭く】
活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}
泣かせる。
出典万葉集 三四七一
「夢のみにもとな見えつつ吾(あ)を音(ね)しなくる」
[訳] 夢の中にばかり(あなたの姿が)やたらに見えて、私を泣きに泣かせる。
参考
[二]は上代の東国方言で『万葉集』の東歌・防人歌(さきもりうた)に「吾(あ)をねし泣くる」の形でいられる。
な-く
…ないこと。▽上の用言に打消の意を加えて体言化する。
出典万葉集 四二〇七
「君が聞きつつ告げなくも憂し」
[訳] (谷の近くに住んでいる)あなたが(ほととぎすの鳴き声を)聞いているにもかかわらず、知らせてくれないことはつらいことだなあ。◆派生語。
語法
活用語の未然形に付く。文末に用いられ、詠嘆の意味を含んで言い切ることもある。「…ないことだなあ」と訳すとよい。
注意
形容詞「なし」の未然形・連用形「なく」と混同しないようにする。
なりたち
打消の助動詞「ず」の上代の未然形「な」+接尾語「く」
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