学研全訳古語辞典 |
むつか・し 【難し】
活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
①
いやな感じだ。見苦しい。気味が悪い。
出典堤中納言 虫めづる姫君
「手にきり付きて、いとむつかしきものぞかし」
[訳] 手に(蝶(ちよう)の鱗粉(りんぷん)が)ついて、とてもいやな感じのものであるよ。
②
煩わしい。めんどうだ。
出典枕草子 にくきもの
「あなづりやすき人ならば、『のちに』とてもやりつべけれど、さすがに心恥づかしき人、いとにくくむつかし」
[訳] 軽く扱ってよい人であるならば、「後で」と言って帰してしまうこともできるだろうが、やはり気がねをしなければならないような人のときは、(そうもいかず)本当ににくらしく煩わしい。
③
不快だ。うっとうしい。
出典枕草子 むつかしげなるもの
「心地(ここち)あしうしてひさしうなやみたるも、男の心地はむつかしかるべし」
[訳] (あまり愛していない妻が)気分が悪くて長く病んでいるのも、男の気持ちとしてはうっとうしいだろう。◆近世以降「むづかし」とも。
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